カウンセリング・トラウマ療法について

まずは、安心して居られる場所になる

 ストレスが多く、人との安心した繋がりも保ちにくい現代において、心の不調や不適応、問題行動が生じるのは、むしろ当然なのかもしれません。それらは、自分がどう生きるかについて教えてくれようとするサインと捉えることもできます。一度足を止めて、足元や周り、そして自分自身のことや、過去のことなど振り返るタイミングかもしれません。

 自分自身が感じること・考えていることを、そのまま言葉にしてみましょう。ここでは、あなたのどんな言葉や考え、感情も、存在も尊重します。自分の中ではぐるぐる巡る考えも、安心できる場所で言葉にして話すだけでも整理・変化していきます。あなたが安心していられて、ちゃんとしなくてもよくて、自分でいられる場所に、Coconがなりたいと思います。


あなたの強み・支えを活かす

 人は強みや支えがあると、どんどん前に進んでいけます。そして、しんどい状態から回復していく時にも、その強みや支えを思い出したり、探したり、作っていくことが大切です。ぜひ、何に誰に支えられたおかげで頑張れてきたのか、あなたの力を教えてください。


「問題」の背景にあるものを見る

 つい目の前の「問題」を早く解決したいと思い、「問題」に囚われてしまうものです。簡単に解決できる問題ではないから悩みや不調となりますし、時に「解決」しようとして余計に「問題」が増幅することはよくあります。

 特に、心の不調が複雑化・長期化している場合には、その背景として「過去の傷つき体験(トラウマ)」や発達障がい・凸凹が関係していることは珍しくありません。

 「大した事ではない」と思っていることが、実は今の「問題・症状」となって表出していることがあります。「問題・症状」に耳を傾けて、過去の自分や、ありのままの自分を一緒に見つめなおしていきましょう。


トラウマ療法を実施

 岡山県内では珍しいくトラウマ療法を実施しています。トラウマとPTSDは違います。PTSDは医学的な診断名ですが、トラウマは誰もが経験したことがある「大変だった経験」です。「トラウマ」というと、事件や事故に巻き込まれたり、自然災害などを想像する方が多いと思います。そのようなトラウマは命に関わる大きなトラウマです。一方、当相談室では、親や先生との関係、こども同士の関係の中で日常的に起こりうる小さなトラウマも重要な支援対象と考えています。処理できるトラウマは処理をして、終わったことにしていきましょう。

 

<小さなトラウマの具体例>
   * 親からの繰り返えされる些細な批判、無視、軽視
   * 親の不仲や感情的な不安定さ
   * 家庭内での慢性的な緊張状態や感情的な抑圧
   * 学校でのいじめ・いやがらせ
   * 慢性的なハラスメント(いじめ、モラハラなど)
   * 大切な人・ペットの死  など
※現状(令和7年度)、解離性同一性障害(多重人格:複数の人格が個人の中に存在し、それぞれの人格同士の記憶共有が困難)へのトラウマ療法は実施しておりません。将来的には対応していく予定です。

トラウマの症状について

1.再体験(フラッシュバック)

 トラウマになった過去の出来事が、今実際に起こっているかのように再体験するフラッシュバックが起こることがあります。悪夢の形で繰り返し思い出されることもあります。本人の意思とは関係なく、きっかけとなる刺激(大きな声、男性等)で引き起こされます。

2.回避

 危険を感じさせる場所や人などから執拗にさけるようになります。実際の場所や人でなくても、「大きな建物」「男性」など本人が危険を感じる場所は広く避けようとすることもあります。

3.過覚醒

 危険を感じさせることに敏感となり、覚醒レベルが高まったまま生活することになります。その結果、眠りにくくなったり、集中しにくくなったりすることがあります。 

4.否定的な考え

 「私はだめだ」、「私は危険にさらされている」「私が無力だ」「私のせいだ」など、否定的な考えが、トラウマ体験やその後の経過によって作り出されます。危機が去ったあとも、その考えが残り、本来の自分の行動や対人関係等のじゃまをしたりします。

 

トラウマとなるような圧倒的で対処不能に感じる出来事があれば、誰でも上記のような症状がでるものです。そして、恐怖感や無力感を周囲に肯定されたり、安心できる環境の中で生活することで、トラウマ症状は自然に回復していきます。一方、様々な理由で症状が長期的する場合や日常生活に困難をきたす場合は、トラウマインフォームドな理解と安心感・コントロール感・自己受容などを前提とした生活を心掛けながら、専門的な支援を受けることが望まれます。


発達障害・凸凹とトラウマ

 発達障害特性が一定程度あると、対人関係トラブルや自己コントロール困難等からストレスフルな状況になりやすいことがあります。また、客観的には大した出来事でないように見えても、本人にとってはとても辛い出来事で、周囲からその辛さが理解されにくいこともあります。それらの結果、大きなトラウマは無くても、多くの心の傷を抱える人も多くいます。発達特性とトラウマ症状が合わさると、不適応から精神疾患、自傷他害まで非常に幅広い症状が出てくることも知られています。


当相談室でのトラウマ療法

EMDR

EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)は、世界保健機関(WHO)もトラウマの治療法として推奨しており、その効果が広く認められている方法です。眼球を左右に動かしたり、両膝を交互にタッピングする等の左右両方(右脳左脳)への刺激を交互に与えることで、脳の中の未処理な記憶を処理していきます。私たちが寝ているときも、目が左右に動くことで脳を整理しており、同じような原理とも考えられています。ただ、目を動かせばよいわけではなく、安全で効果的な手順で実施し、トラウマ体験の際の強い感情が出てきた時、それに対処できる信頼できる専門家と行うことが重要です。心理相談室Coconでは日本EMDR学会認定のEMDR Part2トレーニングを終了したカウンセラーが実施致します。

TSプロトコール

 TS(Traumatic Stress)プロトコールはEMDRから派生して開発された、フラッシュバックの軽減に特に効果的な療法です。フラッシュバックにより、日常・社会生活に支障をきたしている場合、まずフラッシュバックを落ち着かせるために行います。具体的には、身体的不快感を感じつつ、からだの4か所を順番にパルサーという振動する機器を当て、深呼吸を行っていきます。1回の処理は10分程度の短時間で終了し、1~2週間に1回程度処理を行っていきます。一般的には、3・4回目くらいから目立った変化が起きやすいと言われています。まずは、セルフケアの方法を身につけることから始めてもらいます。


家族療法と個人療法を合わせて支援します

 カウンセリングで利用される代表的な心理療法としては、精神分析、来談者中心療法、認知行動療法があります。そのほか、交流分析やインナーチャイルド、ブリーフセラピーや当相談室でも使うEMDRなど様々ありますが、これらは主に個人の内面に焦点を当てる「個人療法」と言われるものです。ほとんどのカウンセリングでは個人療法の見立てと支援を行います。

 一方、家族療法は個人療法に対して「関係療法」とも呼ばれ、個人の内面ではなく、家族等の人間同士の「関係性」に焦点を当てます。

 家族療法はどの個人療法と合わせても活用することができる柔軟な視点です。当室においても、「個人」の見立てと「関係性」の見立て合わせながら、より改善変化に結び付くアプローチをを行います。

 


「家族療法」というものの見方

 私自身育った家庭が円満とは言えず、不安定さや緊張感を感じながら育ちました。その後、大学で様々な心理療法を学びましたが、理論的には分かるけど実感を伴って納得できるものは多くなかったです。その中で家族療法の視点・考え方を知ったときは「これだ!」と思いました。

 知っておくだけでもものの見方が変わる家族療法の知識を1つ紹介します。

システムとIPという考え方

 家族療法は個人の中に問題や症状があると考えません。家族等のシステム(有機的に相互作用しあう1つの組織)の問題や機能不全が本人(IP:Identified Patient患者とみなされている人)に症状として現れている(引き受けてくれている)だけと考えます。家族療法では、IP個人だけでなく、家族全体のシステムや相互作用に焦点を当て、問題解決を目指すのが特徴です。

 不登校や問題行動を起こしている本人にカウンセリングを受けさせて改善させようとすることは多いと思います。これは個人療法的な考え方です。個人の中に問題があると考えて、それを解決しようとする努力です。もちろん、それで改善することもあります。一方で、長期に渡り変化が乏しいこともあります。

 個人だけでなく問題を維持・増幅させているシステム(関係性・パターン等)に気付き、見立てて、変化させていくことで、より「問題行動」がダイナミックに変化しやすくなります。

 私がこの考え方に共感する1番のポイントは「誰も悪者にしない」ということです。人は困った状況に陥ると「本人次第」「親がいけない」「学校がしてくれない」など悪者探しをしてしまうことがあります。家族療法は悪者を探さず、ただ関係性を見立ててそこを変化させて改善を目指すところが、素敵ですし、合理的だと感じています。

 よくカウンセラーをしていて「ストレスたまらないですか」と言われたりします。日々の仕事のごたごたなども、結構システム的に「(究極)誰も悪くないよな(システムの問題だから)」と理解し個人にイライラしたり攻撃的になることは少ないです。その代わり、システム(組織、社会等の背景)への課題意識は高くなるかもしれませんwww。